「スポーツ(運動)と脳科学」第64回ー自然の理とリズム感ー

第57回ブログー福岡伸一博士からの学びーの中で、私の中間総括として「自然の摂理は人間のすべてを包み込むことができる」と記しました。

 

その延長線上で、松下幸之助「道をひらく」という小冊子を手にしました。初版は1968年(昭和43年)で「珠玉の随筆集530万部」とあります。大変良いことが書いてあります。中でも「自然」「素直」「謙虚」という言葉が目につきます。「真剣」という言葉も気になります。今回は、福岡県伸一博士の「動的平衡」「自然・生命・環境」本の延長線上で、「自然の理」について考えてみました。

 

早春の3月、美しい季節の始まりです。桜のつぼみも大きくなり開花・満開待ちです。自然界は、1年で季節が廻ります。春・夏・秋・冬「四季」それぞれの良さがあります。毎日は24時間、朝・昼・夕・夜で回ります。我々人間も、(多分他の動物と同じ様に)割と規則正しいリズムの生活です。毎日の生活は、睡眠7時間・食事3回・入浴1回の・・・・・。

 

個人的な話ですが、子供の頃から、価値判断に迷ったときは「自然か・不自然か」で判断することにしています。自分にとって、結構正しい方向が導き出される判断基準だと思っています。

また大自然のリズムが人間という生命体にとって重要だと思います。自然界のリズムに合わせるように、人の身体は生命のリズムを刻みます。心臓の鼓動(脈拍)は毎分70回位だし、呼吸は毎分15~18回位でしょうか。特に「呼吸」は大事です。酸素と二酸化炭素の交換は生命体維持の根幹です。身体と脳の働きを左右します。

 

国語辞典で「気」を調べると2頁に亘る説明があります。①心の働き(意識)、②心身が持つ精神的な力(気合・気力)、③生まれつきの性質(気性・性質)、④気持ち・感情(気分・快不快・好き嫌いの感情)⑤ある物事に向けられる気(意志・意欲)、⑥周囲に漂う空気や雰囲気(空気・雰囲気)、とあります。

 

我々は生活習慣において、「リズム感」が大事です。仕事・学業・家庭・趣味・スポーツなどは、ある意味、リズム運動の繰り返しです。個人的には、毎日1万歩の有酸素運動が生活習慣の軸になっています。

また「自然・生命・環境」のリズムに合わせて、我々人間は、日常生活の中で、感性や美意識に訴える芸術作品を創作してきました。

1.自然環境→→→絵画

2.生命の律動・リズム感→→→音楽

3.人間生活→→→芝居・映画・落語

 

武者小路実篤の言葉を思い出しました。

「天に星、地に花、人に愛」

やはり、「自然の摂理は人間のすべてを包み込むことができる」のでしょう。大自然は素晴らしいです。

 

最後に、松下幸之助の名言を付記します。

「自然の理にかなったことで事が成らないものはない、何にもとらわれない素直な心で何が理なのかを見極めつつ行動していきたい。」

 

 

 

「スポーツ(運動)と脳科学」第63回ー尊富士関「優勝」おめでとうございますー

尊富士は凄いな!

前日右足首を捻挫負傷した尊富士が怪我を押して出場した大相撲春場所千秋楽の土俵で、豪ノ山相手に攻め切り初優勝を決めた。世紀の大一番に、思わず涙がこぼれた。

 

「幕尻」東前頭17枚目の尊富士(24歳)の記録だが、新入幕力士の優勝は110年ぶり初土俵から所要10場所での優勝は最速記録だそうだ。

 

NHKテレビ解説の師匠・伊勢ヶ濱親方が仰ってた。「 靭帯伸びてるから相撲とれる状態ではない。でも本人から「やりたい」と言ってきた。しばらく考えたが、歴史的な取り組みを、止められないでしょう、止めた方も止められた方も後悔しますよ。」 

伊勢ケ浜親方も万感の思いだっただろう。親方も昨夜はほとんど眠れなかったのではないか。顔がだいぶ腫れぼったい様子で、必死に涙をこらえているようにも見えた。

伊勢ケ浜部屋は稽古が厳しいと噂され、その厳しさと規律の良さが功を奏し、良い関取が育っている。幕内に「富士」がつく力士が五人(来場所は六人)。流石、伊勢ヶ濱親方、厳しい指導で有名だが人情味ある好きな親方だ。横綱照ノ富士の後押しの言葉もあったようだ。

 

相撲って良いな!

「相撲」は日本の伝統文化であり、国技である。
年6場所(東京3・大阪・名古屋・福岡)開催され、地方巡業もある。郷土の代表・地方出身力士の純朴さが何とも言えない。古き良き昭和の時代を思い出す。

相撲は完全な個人競技で道具は一切使わず、文字通り「裸一貫」だ。真剣勝負だから稽古での鍛錬が基礎となる。四股・鉄砲・当たり稽古は良く聞く話だ。

 

個人的には、「地元」朝乃山と、いかにも相撲取りらしい「男前の力士」関脇・若元春のファンだが、今場所初めて知った尊富士の速攻相撲が大好きになった。今でも50メートルを6秒台で走る俊足を生かし、立ち合いの出足とその後の足の運びが素晴らしい。


今場所の尊富士の活躍には感動した。千秋楽の相撲は怪我で絶体絶命の状況の中、極限状態で尊富士はそれでも前に出た。地元津軽弁で「よぐ、けっぱった」だ。大阪の土俵は盛り上がり、大歓声が飛び交った。まるで野武士のような風貌だ。何より野性味がある。今後に期待したい。

 

「スポーツ(運動)と脳科学」第62回ーメモ書きはアイデア源「創造性開発」の出発点ー

「書く瞑想」という本が出版されています。面白そうなので図書館に貸出申込みをしたのですが、予約待ち10件ということで、まだ読んでいません。世の中の本を読んでから後追いで行動するのではなく、自分で主体的に発想し行動することを潔しとするタイプなので、自分が考え、実践してきた方法を纏めてみたいと思います。

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1.A5判バインダーに「A5版メモ用紙」20枚程(A4印刷ミス用紙の裏面利用、半分にカット)を重ねる。バインダーは5枚程(5テーマ分)用意。

 

2.気付いたことを「テーマ別」に4色ボールペンで「メモ(殴り)書き」し、寝かせておく。

 

3.必要に応じ、後日4Bシャープペンで「追加のメモ書き」と、4色ボールペン筆で色付け。この段階は「綺麗な字」や「丁寧な色付け」をする。そして2回目の「寝かし」をする。

 

4.アイデアを膨らませたい「割と重要な個別テーマ」については、A5用紙に清書し綺麗に仕上げる。確かに気分良く自分に集中できる気がする。この段階は「瞑想」に近いのかも知れない。

 

5.最終的には、主要テーマについて

1)A5版作品は年3-4冊作成「研究ノート」に貼付し、長期保存の上、必要に応じ見返す。

2)重要テーマについては、PCデータ(EXCEL)入力し、長期保存の上、必要に応じA4版プリントとして活用する。日常的活用にはA4版ハードケース保管が便利(手持ち作品として50テーマ程を保有)。

3)ブログ作品の基礎資料として活用。

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以上が概要です。

 

参考情報として、本ブログ第11回知的生産技術としての前田裕二著「メモの魔力」について」、という記事に纏めてあります。メモの本質は「ノウハウ」ではなく、「姿勢」「生き方」の問題だそうです。私自身も、メモ技術は創造性開発の原点と考えています。

 

自分の感じ、思い、考えを、素直に言語化文章化ジャーナリングと言うそうです)により、頭の中を整理し、場合により、概念図によりイメージを明確化し、相互の関係を階層構造にしたり、具体化と抽象化の往復運動により物事の「本質」を考えることは極めて有意義です。

 

個人的には、メモ書きは手指と腕の「運動」効果により、脳の活性化をもたらすという実感があります。スマホの指先入力ではその効果は小さい気がします。

 

自分の発想で、「自調・自考+自責・自行」することを重要視しています。

コビー著「7つの習慣基本的考え方であるインサイド・アウト」という概念は自分自身の内面から始める、という意味ですが、創造的アウトプットの出発点として内発的動機付けは重要です。私の好きな4文字熟語「原点回帰」(Return to basics)という言葉に相通ずる面があるかと思います。

 

「書く瞑想」についての参考書

古川武士著「書く瞑想1日15分、紙に書き出すと頭と心が整理される」(2022/1/12、ダイヤモンド社

吉田昌生著「書いて整える1分間瞑想ノート」(2023/11/20、フォレスト出版

 

私が自分の発想と試行錯誤の中で得た「書く習慣」の方法と既存の「書く瞑想」本の方法の差異や特徴を比較評価できるのはもう少し先ですが、読書にはこんな楽しみ方もあるのだなと、今からワクワクしています。

 

「スポーツ(運動)と脳科学」第61回ー福岡伸一博士の5冊目の本を読んでますー

分子生物学者・福岡伸一博士の5冊目の本を読んでます。「新版動的平衡」(2017/6/5、小学館頁数:319頁、定価:1,000円(税別)という本です。正確に言うと、福岡博士が、自ら主著という2009年の単行本動的平衡」を新書化したもので、修正・加筆の上、新たな章(第9章「動的平衡を可視化する」)を加えた良書です。近くの本屋で購入し、全体をサラリと読み、重要部分に鉛筆線引き、キーワードを黄色蛍光ペンで浮き彫りにした段階です。これから何回も読み返すことになりそうです。

 

今の時代、ネットでの本紹介や書評が参考になります。ここでは私の感性に響いた部分を中心にご紹介しつつ、自調・自考してみました。

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1.福岡博士は、著書の中で、「生物学」分野のノーベル賞受賞者よりも、むしろその基礎を創った研究者をクローズアップしています。

1)ルドルフ・シェーンハイマー(ドイツ生まれ、ベルリン大学医学部卒業、米国生化学者、1898-1941自死)、同位体を用いた測定法を開発し、生命が「動的な平衡状態」にあることを最初に示しました。食べ物に含まれる分子が瞬く間に身体の構成成分となり、また次の瞬間にはそれは身体の外へ抜け出していくことを見出し、そのような分子の流れこそが生きていることだと明らかにしています。

 

2)アマチュアの顕微鏡の発明者レーウェンフック(1632-1723)。専門的教育を受けていなかったのですが、自作顕微鏡で生物学において重要な発見。歴史上はじめて顕微鏡により微生物を観察し、「微生物学の父」とも称されています。

 

3)アンリ・ベルクソン(フランスの哲学者、1859-1941)「生命には物質の下る坂を登ろうとする努力がある。」という、ベルクソンの弧動的平衡の数理的概念モデルは画期的です。是非、本書や関連動画でご確認ください。

 

2.脳の成長過程と脳の合目的性(57頁~59頁)

1)養老孟司著「考えるヒト」で学んだ、「入出力装置としての人間の脳」概念図を思い起こす文章があり、感慨深いものがあります。以下そのまま引用します。

「脳の内部では、神経細胞ニューロンがお互いに触手を伸ばし合って、それらが連結して(シナプス複雑な回路を形成している。この回路に微弱な電流が走ることによって、私たちは話したり、考えたり、記憶したり、あるいは細かな工作をしたり、走ったり、楽器を奏でたりしている。

一つひとつの知覚感情思考行動固有の神経回路が存在している。しかし、それぞれの反応に固有の神経回路は生まれつき、もともと準備されていたものではない。」

「・・・・・この回路網は「刈り取られて」いく。環境にさらされて、さまざまな刺激に遭遇すると、そのときに使われる(つまりよく電気が流れる)回路は太く強化される。逆に、使われない回路は連結が切れ、消滅していく。このようにして、私たちはこの多様性に満ちた世界と折り合いをつけていくのだ。」「このような環境との相互作用の結果として脳の合目的性が生まれる。合目的性は最初から目指されたものではなく、膨大な可能性の中から選び取られてきたものなのだ。そして、この選択はそれぞれの個別の環境とタイミングで決定される。」

 

3.私たちを規定する生物学的制約から自由になるために、私たちは学ぶのだ。」この文章から、山口周著「自由になるための技術 リベラルアーツ」という本を思い出しました。自由になるための技術=広い意味での「教養」です。これは哲学の世界の話かも知れません。

 

4.消化とは情報の解体汝とは、汝が食べた物そのものである

食物→「タンパク質」→咀嚼・消化管で消化酵素により分解し「アミノ酸」→吸収(低分子化された栄養素が消化管壁を透過して体内の血液中に入る)

 

5.脳で情報伝達に関わっている神経ペプチドと呼ばれるホルモンとほとんど同じものが、消化管の神経細胞でも使われている。第六感:gut(消化管)feeling、意志の力・「ガッツ(根性)」:gutsと呼ぶ。→脳腸相関。

サステナブル(持続可能性とは、常に動的な状態のことである。」

 

.生命活動とはアミノ酸の並べ替え

タンパク質アミノ酸にまで分解され、アミノ酸だけが特別な輸送機構によって消化管壁を通過し、初めて「体内」に入る。

 

体内に入ったアミノ酸血流に乗って全身の細胞に運ばれる。そして細胞内に取り込まれて新たなタンパク質に再合成され、新たな情報=意味を紡ぎ出す。つまり生命活動とは、アミノ酸による不断の並べ替えであると言っても良い。」

 

新たなタンパク質合成がある一方で、細胞は自分自身のタンパク質を常に分解して捨て去っている合成と分解との動的な平衡状態「生きている」ということであり、生命とはそのバランスの上に成り立つ「効果」であるからだ。」

 

サステナブル(持続可能性)とは、常に動的な状態のことである。」

 

7.イン・アンド・アウト

『私たち人間は、1日に60gのタンパク質摂取を必要としている。一方糞中に排出されるタンパク質量は約10gである。』

 

「私たちが食物を食べると、ここからドクトクと消化酵素が流れ出てくる。膵臓が合成しているトリプシン、アミラーゼ、リパーゼなどの消化酵素であり、消化酵素はタンパク質でできている。消化酵素液は、太い管に合一され、胃のすぐ下、十二指腸のあたりに繋がって、消化管の内側に口を開いている。消化酵素液の量は一日当たり60~70g。つまり食べた食品タンパク質とほぼ同じ量以上の消化酵素膵臓から消化管内に放出されている。この大量の消化酵素が食品タンパク質をその構成単位であるアミノ酸にまで分解する。」

 

消化管内は、食べた食品タンパク質とこれを解体しようとする消化酵素ほぼ等量グジャグジャにまじりあった混じり合ったカオス状態にある。消化酵素もタンパク質なので、最終的に消化酵素は消化酵素自身も消化する。そしてアミノ酸になる。それらは再び消化管壁から吸収される。」

 

消化管内でひとたびアミノ酸にまで分解されると、それは元々食品タンパク質だったのか、消化酵素だったのか見分けはつかない。」

 

糞中に排泄される10gのタンパク質とは、このなれの果てである。60gの食品タンパク質と70gの消化酵素との壮絶なバトルの残滓である。』

 

8.ダイエットの科学

1)基礎代謝(心臓・肺を動かし、体温を維持し、基礎的な代謝を円滑に動かす熱量)は成人男性1,400-1,500kcal・女性1,100-1,200kcalで、これに身体活動のレベルに応じて1.5から2の係数を乗じるとエネルギー必要量が算出される。

 

2)余剰カロリー(インプット)と体重増加(アウトプット)は、生命現象として非線形の関係、チビチビ食べた方が太りにくい食べ方だと言える。

 

9.生命は分子の「淀み」

1)シェーンハイマーは何を示唆したか

アイソトープ同位体)を使ってアミノ酸標識、私たちの生命を構成している分子は、プラモデルのような静的なパーツではなく、例外なく絶え間ない分解と再構成のダイナミズムの中にあるという画期的な大発見がこの時なされた。」

2)シェーンハイマー「ダイナミック・ステイト動的な状態)に対し、福島博士は、この概念を拡張し、生命の均衡の重要性をより強調するため動的平衡と訳した。

3)自然界は「渦巻き」の意匠に溢れている。効率→質感、加速→等身大の速度まで減速、直線性→循環性。渦巻きは、おそらく生命と自然の循環性を象徴する意匠そのものだ。

 

10.生命・自然・環境そこで生起する、すべての現象の核心解くキーワード、それが動的平衡

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動的平衡は仕事・勉強・家庭・スポーツ・趣味など広く社会一般に通用する概念です。自分の視野を広げ、価値観を豊かにしてくれます。

本書「単行本あとがき」に記された「書くことが考えを生み、考えが言葉を探そうとする」と同じ心持ちで、この記事を書いています。私の場合は毎日1万歩の有酸素運動を生活の軸として、歩くこと(動くこと)が書きたい気持ちを促し、書くことが考えを生み、考えが言葉を探そうとする」、ことでブログ記事執筆が捗ります。

 

福岡伸一先生の本を読むと、自然科学、文学、更には経済・経営学も、土台は「哲学」なんだ!という気がします。読む順番は逆(新しい順)になりましたが、今月中に生物と無生物のあいだを読みます。福岡哲学「守破離」の「守」の段階を卒業し、「破」の領域に足を踏み入れたいと思っています。

今、情報化社会の極みとも言うべきAI人工知能の時代ですが、 こんな時代だからこそ自然の摂理」に導かれた羅針盤が必要です。自分自身の知性・感性・野性を育みつつ、試行錯誤しながら、継続的に創造的アウトプットの質を高めていきたいと思います。

「スポーツ(運動)と脳科学」第60回     ーコヴィー著「7つの習慣」は一生役に立つ本ー

全世界で3,000万部、日本でも累計200万部売り上げのベストセラー&ロングセラー、ティーブン・R・コヴィー著「完訳 7つの習慣(2013/8/30、キングベアー出版)、頁数:520頁、定価:2,200円(税別)は、「人生論」「幸福論」として最高の本です。

 

個々人は皆、自分の人生の経営者と思っていますが、その基本書として活用しています。休日の豪華ランチ1回分で一生モノの愛読書を手にできます。

「成功には原則があった!」「人格主義の回復」などの副題がつけられています。1回で本全体を読む込むというよりも、個人生活の中で疑問や課題が出た時に何回も何十回も読む本です。どんな質問に対しても、示唆に富んだアドバイス・ヒント・解答を得ることが出来ます。どんな種類の課題にも対応できる幅広さと奥深さを持った本です。

 

参考

「人格は繰り返し行うことの集大成である。それ故、秀でるためには、一度の行動ではなく習慣が必要である。」-アリストテレス

 

以下、本書内容の一部紹介です。

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7つの習慣とは

新しいレベルの思考で、原則を中心に据え、人格を土台とし、インサイド・アウト(内から外へ)のアプローチによって、個人の成長、効果的な人間関係を実現しようという思考である。インサイド・アウトとは、一言で言えば、自分自身の内面から始めるという意味である。内面の最も奥深くにあるパラダイム、人格、動機を見つめることから始める。

 

本の構成

[第一部 パラダイムと原則

 

[第二部 私的成功

第1の習慣:主体的であること

第2の習慣:終わりを思い描くことから始める

第3の習慣:最優先事項を優先する

 

[第三部 公的成功

第4の習慣:Win-Winを考える

第5の習慣:まず理解に徹し、そして理解される

第6の習慣:シナジーを創り出す

 

[第四部 再新再生(リニューアル)

第7の習慣:刃を研ぐ

 

教訓

「自分の最高の望みを達成し、最大の困難を克服したいならば、自分が求める結果を支配している原則自然の法則を知り、それを適用する。」

 

人間の本質

肉体・知性・心情・精神」の四つの側面がある。

 

偉大な心理学者マズローも、人生を終えるとき、自分自身の自己実現」欲求よりも、子孫の幸福、達成、貢献を願ったという。彼はそれを「自己超越」と呼んでいた

7つの習慣に含まれている原則の最も大きな力、最も満足感を与えてくれる力は、自分の子や孫たちを思う気持ちから生まれるのである。

 

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私は2020年6月にこの本を購入したのですが、最初に全体を拾い読みした後、以降は必要が生じた都度、何十回も読み返してきました。今夜も、重要部分の線引きとキーワードで蛍光ペンで浮き彫りにしながら、ブログ記事作成に至りました。

本書を開くたびに、著者の問題意識の高さと思考力・文章力、それに翻訳者のセンスの素晴らしさで成程感に満たされます。

 

本書は大半の本屋さんの店頭に並んでいると思います。百聞は一見に如かずです。是非、お手に取ってご覧ください。新入学・就職の贈り物としてもお勧めの本です。

「スポーツ(運動)と脳科学」第59回ー無意識を鍛えると、意思決定が9割良くなるー

茂木健一郎著「意思決定が9割良くなる無意識の鍛え方」(2022/4/28、KA

DOKAWA)、頁数:191頁、定価:1,400円(税別)、という本を読んだのは1月中旬ですが、ブログ記事にするのに2カ月かかりました。 関連書も読んだり裏付けを取りながら読書記録を作成しました。

「無意識」は創造性/アイデアの宝庫では?という目的意識で本書を読みました。「神経伝達物質」「神経ネットワーク」「脳波」「呼吸」「有酸素運動」との関係に興味がありました。本の前半は雑談的内容が多いのですが、後半(5~7章)に内容の盛り上がりがあります。参考文献が多いのでどの部分が自説なのかは明確ではありませんが、「僕は」で始まる文章は著者の持論です。私自身の気付き部分は、赤30・青14=計44箇所と多いです。図書館貸本ですが、茂木書をもう1回じっくり読んでみたい気がしてます。 以下、本の要約ですが、個人的な興味を優先しています。                                  
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 [はじめに]                                    
4頁    人の行動の9割は無意識で行われる、直感閃き意識の外からやってくる。                                
                                    
第一章 私たちの生活にある「無意識」を解き明かす                                    
18頁    人が1日に下す決断は3万5千回。人が意思決定するとき、脳内では様々な回路が働くが、意識的か無意識的かでも辿る回路は一緒。                                
                                    
22頁    精神科医フロイトが無意識の存在を確立し、そのメカニズムを体系化。                                
                                    
第二章 世界的にも稀有な「日本的無意識とは」                                    
48頁    異なる文化、経験、歴史、価値観がひしめく国際社会では、「言わなくてもわかるだろ」といったハイコンテクスト的理論は通用しない。非言語的コミュニケーションとも言えるハイコンテクスト文化こそが、実はこれからの日本の強みになるのではないか。言語化できるものは、近い将来にAIに追いつかれてしまう。言葉にできない曖昧さ、行間、空気感こそが、今のところはAIが勝機を見いだせないでいる”人間っぽさ”に他ならない。                                
                                    
第三章 押さえきれない感情はコントロールできる                                    
79頁    感情のコントロールには、大脳新皮質、中でも、前頭前野の機能が極めて重要。怒りを制御できるか、できないかも、喜びや悲しみといった感受性の豊かさも、前頭前野の発達具合によるところが大きい。                                
                                    
第四章 現代社会に適応した人間関係へアップデートする                                    
90頁    心理学者のアルフレッド・アドラーが「すべての悩みは対人関係に集約される」                                
                                    
第五章 個性という無意識を鍛える方法                                    
124頁    養老孟司さん「個性っていうのは、無意識の中で生まれるものなんだよ。」
                                    
130頁    無意識へのアプローチとしてまず、「全体を柔らかく俯瞰する視点」だ。           
134頁    「マインドフルネスとは何か?」、「今ここ」で起きていることに対して注意を向け、自分が抱いている感情、思考を判断せずに、冷静に観察している心の状態のことだ。その状態を最も実践しやすい手段として、①床や椅子に姿勢を正して座る。以②2~3分、自分の呼吸に集中する。瞑想。                                
                                    
脳内には「デフォルト・モード・ネットワーク」(DMN)という、少し変わった神経回路がある。すでに紹介した前頭前野扁桃体といった、脳の各部位をつないで束ねる中心的な役割を果たしている。                                
    通常、人の脳は、何か考え事をしている時にときに活発に活動するものだが、このDMNは、そうしたときには活動を潜め、無目的で何も考えていないときだけ活発化する特質がある。言わば脳がアイドリング状態のときに、活発に活動している神経回路だ。                                
このとき、脳内では、情報の整理をしたり、自分自身を振り返ったりしている。                                
                                    
 143頁    「晴らしいアイデアは雑談から生まれる」 僕は雑談が大好きで、それに関する本も出したほどだ。雑談ほど気軽に実践できるクリエイティブな行為はないと思っている。こんな自由なやりとりは人間ならではのもので、AIにはマネしようと思ってもできない芸当だ。雑談は、言わば脳のマッサージである。素晴らしいアイデアは、会議室ではなく無駄話で生まれると言いう人もいるくらいだ。                                
                                    
第六章 「スピリチュアル」を科学的に考える                                    
149頁    「外から来る五感内から来る第六感」、超常現象、あるいは第六感などの言葉から連想される「目に見えない世界で起きること」の本質は、無意識と密接に関わっている。                                 
    五感と六感の大きな違いは、その情報が外部から来るものなのか、内部から来るなのか、という点である。外部からの情報を得て反応する五感と違い、第六感は、身体の内側からのシグナルをキャッチしている。                                
                                    
153頁    「第六感からわかる、身体の声を聞く重要性」 、つまり「脳ではなく身体が覚えている」という現象について、アントニオ・ダマシオは、身体の内部から発生するシグナルを「体性感覚」と呼んだ。内臓や血液の状態、筋骨格の空間的な位置情報、皮膚の表面感覚など、僕たちが意識しない所で、体性神経は膨大な量の情報を脳に伝えている。                                
                                    
154頁    ともすれば、人の意識や思考、それに伴う言動の起源は、すべて脳にあると錯覚してしまいがちである。しかし長い進化の歴史を鑑みれば、まず身体が形成され、その後、それをサポートするために進化したのが脳なのだ。                                
    近年において、ダマシオの仮説は至るところで取り入れられ、その内容が実証されている。「第二の脳」と言われて注目が集まっている腸もその一つだろう。                                
    ダマシオの研究では、「身体の声に耳を傾ける」ことの大切さを実感させられる。これは第六感とも直感とも言われるものだ。                                
                                    
                                    
159頁    「アイデアが降りてくる」は本当なのか                                 
    閃きは、脳内のビッグデータ前頭葉の掛け合わせによる、0.1秒の同時発火からもたらされる。僕たちが何かアイデアを欲しているとき、まずは前頭葉が「こんなもののが欲しい」というリクエストを出す。それを受けて、脳内のビッグ・データである側頭葉が、リクエストに一番近いものを、過去のアーカイブから引っ張り出してくる。これが閃きのメカニズムだ。                                
    実際、ボーッとしているときシャワーを浴びているとき。厳密に言うと、閃きは、一つの問題について集中して取り組んだ後のリラックスタイムに起きやすい。それは、集中しているときに処理された様々な情報が、点と点として結びつくことで、新しいアイデアが生まれる可能性が高まるからである。その結びつきに大きく寄与しているのが、DMNだ。                                
                                    
                                    
第七章 無意識力が高まる「習慣」のつくり方                                    
164頁    やる気はいらない、必要なのは「習慣」だけ 無意識を耕すために実践できる、日々の習慣。まず初めに極めて大切なこと、「何かを続けよう」と思ったら、必要なのはやる気ではなく、「習慣」である。                                
                                    
    僕の朝のルーティン気分としてはフラット(無意識)である。                                
    その無意識の行いが習慣化につながっていく。                                
    三日坊主でも1,000回繰り返せば、立派な習慣である。                                
                                    
165頁    続けることが大切なのは、脳が変化を嫌うものだからだ。脳は、基本的に安定性を重視し、「いつも通り」をキープするようプログラム。「無意識を鍛えて、明日から変わろう!」と思っても、簡単に人は変われない。毎日の習慣で少しづつ脳に刺激を蓄積させていくことで、思考や意思決定は穏やかに、でも確実に変化していく。                                                 
167頁    「日常のルーティン化」は、「今、ここ」への集中力を高めるのに有効である。                                
167頁    朝のルーティン:朝のランニング(1時間)→シャワー→仕事                                                 
168頁    朝に限らず、行動をある程度ルーティン化することは、決断する機会を減らして脳の負担を軽減することに寄与し、脳科学的にもそのメリットが実証されている。                                
169頁    頭を空っぽにして歩く「歩行禅」 無の境地で歩く、ゆったりとした呼吸、何も考えずに歩く→DMNが活性化し、思わぬ閃き・気付き・アイデアが思い浮かぶ            =有酸素運動が脳にいい影響を及ぼす                                
     ①前頭前野有酸素運動によって鍛えられ、集中力や判断力が向上                               ②習慣的な運動は、自律神経が安定する                                
               
171頁    落書きは、想像力や閃きを司る右脳を活性化させ、左脳に偏りがちな脳の働きを回復→記憶の定着、発想力や思考力の向上など                                
                                    
173頁    落書きは、リラックスしながら集中=クリエイティブを高めるのに理想的な脳の状態、女性TEDサニー・ブラウン「落書きとは、思考を促すために思いのままに描くこと」。                                
                                    
175頁    「食事瞑想」の一つ、一粒のレーズンをとことん味わい、食事の量→質にこだわる、気づきを通して自分の五感が研ぎ澄まされていくのを実感できる。                                
 177頁    大切なのは、自分の身体の声に耳を傾けること。「食べる」という行為は極めて原始的な行為であるからこそ、僕たちの心と身体に深く関わっている。                             「咀嚼」満足感、肥満・生活習慣病予防、血糖値コントロール、心も満たす                                
 178頁    デジタル時代の今こそ読書が必須 集中力を養うためのツール読書を是非習慣化してほしい。集中力を要する。脳内では、背外測前頭前野という部位が活発に働く。                                
178頁    読書を通して五感の記憶が触発され、それらを言葉を通して整理することは、脳の最も高度な働きの一つである。更に、本を読むときは頭の中で何かしらのイメージをするが、その行為自体が、抽象的な思考力を高めるのに一役買っている。深い集中力の中で、言語とイメージの両面から情報を組み立てる脳の神経活動が、知性のスペクトラムを形成するのだ。                                
                                    
180頁    本で知識を蓄えておくことは、本当の意味で知性を高めることだ。                         本当の意味での知性とは、こうした教養の幅広さを言うのではないか。教養を蓄えるということは個性を磨くことでもある。                                
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著者の茂木健一郎先生は、多くの著書の他、数多くのYouTube作品があります。

本書「無意識の鍛え方」とYouTube動画を、是非ご参照いただければと思います。

 

個人的には、「無意識と習慣化」「創造的アウトプット」について興味があり、本書と並行して何冊かの参考書も読み返しました。私自身が体得しつつある「無意識と習慣化」フローにつきまして、「無意識」関連の参考書と併せて、別の機会にプログ記事として纏めたいと思っています。

 

                

「スポーツ(運動)と脳科学」第58回-福岡博士の朝日新聞連載作品集「ゆく川の流れは、動的平衡」-

福岡伸一博士朝日新聞連載作品を集めた「ゆく川の流れは、動的平衡という本があります。前回記事「動的平衡2」はガッツリ本だったので、並行してパラ読みし自分の読書リズムを整えていました。「600字程度のエッセー」集なので、割と気軽に福岡博士の世界を楽しめます。「簡にして明」作品集です。

福岡教授の本は冒頭部分に博士の思いが詰まっていることが多い気がします。この本の「序文」には、18世紀のドイツの詩人の言葉が出てきます。次いで最初のエッセーです。

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「生命の惜しみない利他性」

(横浜のみなとみらい駅近くの黒い大きな壁一面に、碑文が刻まれているそうです。)

樹木は、この溢れんばかりの過剰を、使うことも、享受することもなく自然に還す」、「動物はこの溢れる養分を、自由で、嬉々とした自らの運動に使用する」。植物と動物の共生、生命の循環、を端的に表現したドイツの詩人シラーの言葉です。

(私の個人的な話:本籍は横浜ですが、この文章を読み、故郷の横浜へ帰ってみたくなりました。お近くにお住まいの方は是非お出掛けください。)

 

「命の美しさ、感じる心こそ」

卓越した先見性をもって環境問題に警鐘を鳴らした生物学者レイチェル・カーソンは、子どもの育ちにとって最も大切なものは知ることよりもまず感じること、と言った。センス・オブ・ワンダーという言葉を使った。自然の精妙さ、繊細さ、美しさに対して驚きを感じる心である。

(大人でも、あまりの自然の美しさに思わず涙する心は持ち続けたいものです。)

 

「なぜ急に色気づくのか」

霊長類の中でも、なぜ、ヒトにだけ長い子ども時代があるのか子どもにだけ許されるいることは? 遊びである。闘争よりもゲーム、攻撃よりも友好、防御よりも探検、警戒よりも好奇心、現実よりも空想。それが子どもの特権である。なかなか成熟しないかわりに、遊びの中で学び、試し、気づく。これが脳を鍛え、知恵を育むことにつながった。(これが、福岡博士の仮説だそうです。素晴らしいです。)

児童文学者の石井桃子さんの言葉も引用されています。「子どもたちよ 子ども時代を しっかりと たのしんでください。おとなになってから 老人になってから あなたを支えてくれるのは 子ども時代の『あなた』です

 

「生命、かつ消えかつ結びて」

ノーベル賞学者の大隅良典先生とお話しした際に、ご自分の研究の進展によって、細胞は物質を合成する以上に、分解することを一生懸命していることがわかってきた。たんぱく質合成の方法は一通りなのに、分解には複数の経路が多重に用意されていた。そして生命現象は絶え間ない合成と分解のバランスの上に成り立っている

方丈記の冒頭ほどみごとに生命の動的平衡を言い表した文章を私は知らない。「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまりたるためしなし」。なんと鴨長明は、消えることを結ぶことよりも先に書いているではないか! つまり、合成に対する分解の意義の優位性をすでに言い当てていたのだ。

 

森毅先生との日々」

京大教養部の名物数学教師だった森毅先生は、大学入試も各教科の得点を、二乗してから足せばよい、と言っていた。そうすれば平均的な学校秀才ではなく、一芸に秀でた人を合格にできる。大学とは教科を学ぶ場所ではなく、むしろ大学という自由空間に棲息する、奇妙な生き物が発する不思議な振動に感応する磁場だと悟った。

 

「やがては流れ流れて」

平家物語祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」

方丈記「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」

現在、大騒動をもたらしている感染症も、やがては流れ流れていくはずだ。それは制圧や根絶ということでなく、ウイルスとの共存という形で。ワクチンや治療薬の開発、そしてなにより我々側の馴れによって、日常の一つに一つになるということである。

何事にも終わりがあり、終わることによって始まることもある。長きにわたり、ご愛読ありがとうございました。[2020年3月19日]

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以上が私自身の心を動かされた文章の数々です。

本書は装幀とイラストも素晴らしいです。

 

福岡伸一博士は、日米両国往復で多忙な研究生活をされながら、2015.12.3-2020.3.19の期間4年半は、「毎週」朝日新聞連載を続けていたと聞きます。超人的です。良質の短編集です。

福岡先生は、生命の「動的平衡」というご自身の研究テーマを軸に、思考を展開されています。五感から入る「情報」と、頭の中で感じる・思う・考える「感情」と「思考」を経て、話す・書く・行動するという「自己表現」に至る過程で、素晴らしい作品の数々を生み出されています。

 

私にも出来そうな気がしてきました。このブログの場で「スポーツ(運動)と脳科学」という研究テーマを軸に、自分の言葉で自己表現することが出来そうな気がします。

週に何編か、拙い作品でも良いから、ブログ記事にして投稿していきたいと思います。可能な限り自分の言葉で、自分が感じ・思い・考えたことを、素直に言語化・文章化することは出来そうな気がします。自分の「センス・オブ・ワンダー」の力を信じたいと思います。