前田裕二著「メモの魔力」は、「睡眠・運動・朝散歩」の謳い文句で有名な樺沢精神科医の動画と著書で知り、3年前に読みました。今回、細谷功著「13歳から鍛える具体と抽象」を読んで前田裕二氏の「抽象化」の話を思い出し、本書と当時私が書いた読書記録を読み返しました。
私自身、「メモの魔力」を読む前はメモの書き方のハウツー本と思っていたのですが、改めて、本質的で示唆に富んだ知的生産技術としての良書だと実感しています。メモの本質は「ノウハウ」ではなく「姿勢」、「生き方」の問題だそうです。最新情報では75万部出版のロングセラーです。
本書でも紹介されている細谷功氏は、最初の著書「地頭を鍛える」(2007年)の中で、「抽象化」について詳述しています。
また「ストーリーとしての競争戦略」の著者である一橋大・楠木建教授は、2012年の論考の中で、『抽象と具体との往復運動を繰り返す思考様式がもっとも「実践的」で「役に立つ」。僕の「地アタマの良さ」の定義は抽象と具体の往復運動の振幅・頻度・スピードです。』、という趣旨を語っています。前田裕二さんは、楠木教授とも親交があるようです。
メモを書く行為は脳からの出力としての筋収縮運動です。通常は行動に移る前の下準備の場合が多いですが、本ブログ第3回「戦略基地としての書斎」でも触れましたが、メモ書きは創造性開発の原点だと思います。
「メモで創造性を深める」には、「抽象化」という概念が大事になります。思考は脳内での「具体と抽象の往復運動」ですが、前田裕二氏は、毎朝15分以上のランニングを習慣化しているそうです。
前田裕二著「メモの魔力」(2018/12/25、幻冬舎)、頁数:255頁、定価1,400円(税別)、Amazon:4.2、楽天:4.09、個人評価4.8
以下は3年前に書いた私の読書記録です。なるべく原文のまま引用させていただきます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 前田裕二 「メモの魔力」 2020-6-13(SAT) 購入6-6(SAT)
経緯
樺沢医師のメルマガ動画「発想力を磨く3つの方法」の中で、前田著「メモの魔力」紹介
目次
序章「メモの魔力」を持てば世界に敵はいない
自己流で作っていた「自己分析ノート」は、最終的に30冊超え
1章 メモで日常をアイデアに変える
「知的生産」のためのメモ、「ファクト→抽象化→転用」という最強の枠組み
2章 メモで思考を深める
抽象化とは「本質を考える」こと
3章 メモで自分を知る 「自己分析ノート」で人生の軸を見つける
4章 メモで夢をかなえる
「言語化」で夢は現実になる
5章 メモは生き方である
メモの本質は「姿勢」、いち早くメモを「努力」から「習慣」へ
終章 ペンを取れ。メモをしろ。そして人生を、世界を変えよう
自分の気付き
1.前田裕二氏は、樺沢精神科医の考え方・手法との共通点を感じます。
・樺沢著「アウトプット大全」では、読む・聞くがインプット、話す・書く・行動するがアウトプット
・また樺沢医師の動画では、発想力を磨く3つの方法として、①新しい体験(旅行・読書)、②メモ、③人に話す、を挙げています。
2.自分と似た発想・アプローチ手法だと思いました。
・4色ボールペン使用、「本質」を見極める、言語化を重要視
3.前田氏と意外な有名人との繋がりがあります。
・DeNA創業者・南部智子氏(「良質な非常識」という名言)、堀江貴文氏
4.前田式ノートは「見開き2頁」様式で、絶妙なセンスです。
・他に、自己分析1000問・SNSで募集した「人生の軸」資料、本「背表紙」は実物メモ集
5.個別内容(要約)を列挙します。
44頁 前田式メモ「ノート」はアイデアを生み出す方式、左頁に日付・サマリー・標語+自分のアンテナに引っかかってきた「ファクト(事実)」、 右頁の左半分に気付きを「抽象化」した要素、右半分に自らの行動に「転用」の要素
72頁 「抽象化」こそがメモ術の根幹、人間に与えられた最も重要な思考機能であり、最大の武器
84頁 ①具体情報を正確に受け取る、②「他に転用可能な」要素を抽出、③別の具体的なものに転用、という思考フロー
92頁 「自分が素直に良いと感じるもの」を見たときに、素通りせずに、キャッチして抽象化
100頁 得た気付きを、その瞬間を、その意識を、逃げずに「言語化」
107頁 「自分の感性に引っかかる言葉」を一つでも多く書き留めておく
110頁 「我見」と「離見」が抽象化を加速させる
116頁 メモの魔力によって、「本質的な人生の軸」を知るべき(自分自身にWhyを向けてみる)
140頁 「じゃあ今この瞬間、それに向けて具体的に何をするの?」まで書く
152頁 夢はただぼんやりと思うのでなく、逃げずに言語化する、更にはっきりと映像化する
163頁 夢(ゴール)設定時に、具体的Specific・測定可能Measurable・時間の制約Timeが重要
166頁 ストーリーを語る際に、①エピソードは具体的に、②「間」を使いこなす間、③双方向で話す
175頁 「ライフチャート」、横軸「年齢」、縦軸「感情」
・中学生以前を厚めに書く(大人になっても変わらぬ人の本質的な特性が眠っていることが多いから)
・最も見るべき箇所は「変曲点」
・感情大きくアップさせたものを発見できれば、それが自分の「生きる意味」「幸せの源泉」
186頁 メモを習慣化するために、自分の心が上がるノート・文具を使い、小さな成功体験を積む
188頁 シャワー中にアイデアが浮かぶ理由 インプットがゼロ環境でアウトプットが出やすくなる
参考文献
1.前田裕二氏インタビュー記事 研究ノート3 (2020/6/10)
2.南部智子氏情報 研究ノート3 (2020/6/11) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
自分の主な気付きは4項目ですが、他に個別事項13項目の中にもキラリと光る内容が盛り沢山です。また「抽象化」がメモ術の根幹、「人間に与えられた最も重要な思考機能であり、最大の武器」と断言しています(72頁)。また、SHOWROOM社事業についてかと推察しますが、「世界を獲る」という覚悟(207頁)もされてます。
改めて、著者は相当考え抜いた思考の持ち主で本当に「地頭の良い」方だと感じます。見出しの付け方(「キャッチワード」)や感覚的表現のセンスも抜群です。
また、細谷功氏の下記著作3冊の地頭力や抽象化の概念が、本書の理解に役立ちました。
「地頭力を鍛える」(2007/12/20、東洋経済新報社)
「アナロジー思考」(2011/8/11、東洋経済新報社)
「13歳から鍛える具体と抽象」(2023/10/10、東洋経済新報社)
前田書並びに細谷書で得た学びから、個々人が、「素直」に、可能な範囲の「上位概念」(=抽象化)で、物事を考える習慣が胆と捉えました。個人的には、メモはアイデア・発想の原点、メモ技術は、本ブログ第3回「Input/Output戦略基地としての書斎」に記載した「創作活動の5段階」の出発点と考えています。自分流の「研究ノート」を活用し、メモ技術を創造性開発の一手段と捉えていきたいと考えています。
創作活動の5段階 2023/12/5一部修正 「メモ技術」
出発「点」は『メモ』 0次元
「線」 →一歩前進(方向性) 1次元
「平面」 →進化(水平展開) 2次元
「立体的」 →深化(深く掘り下げ) 3次元
+時間軸/傾向分析 →真価(本質、過去・現在・未来)4次元
別枠として、「色彩」/「質感」
個人的には、数年前から試行錯誤しながら、樺沢紫苑書・前田裕二書・その他書籍も参考にして、今現在
1.毎日1万歩ウォーキングを軸に生活習慣リズムを整え、
2.月10冊程度の本(+読書記録)・文献・ネット記事で情報分析し、
3.自己流「研究ノート(含むメモ技術)」で創造性開発を心掛け、
自分流の執筆活動を進めています。
最後になりますが、前途有望な若き経営者、SHOWROOM前田裕二社長の公私両面にわたるご活躍をお祈り申し上げます。