「スポーツ(運動)と脳科学」第80回ー「快」の感情が行動の推進力、人間は体を動かすのが自然「本来の姿」ー

前回のブログで、YAMAP代表・春山慶彦氏の『自然体験しつつ、自分の命の「ときめき」に素直に生きる』についてご紹介しました。これは、神話学者・キャンベル氏の ”Follow your bliss”という言葉を意訳したものです。”bliss”は「無上の喜び」という意味です。

 

私自身は、春山氏の「命のときめき」という言葉を「心のときめき」と解釈し、更に「ワクワク感」という言葉に置き換え、その意味について考えてみました。「ワクワク感」は、ズバリ、脳内で分泌される神経伝達物質ドーパミンの作用によると考えられます。ドーパミンは、ワクワクした感情や楽しさとともに分泌され、集中力を高めます

 

青砥瑞人著「BRAIN DRIVEN」(2020/9/25、ディスカバー21)によれば、具体的には、SEEK(追い求める)・WANT(欲しい)・TRY(試してみる)・LIKE(好き)の4つの衝動によりドーパミンが分泌され、モチベーションが高まると言われています。モチベーションは「やりたい・やるべき」行動を誘発してくれます。モチベーションが高いと、注意力・集中力・記憶定着なども高まります。また本質的に高いモチベーションには「快」の状態をつくり出しやすい機能もあります。様々な面から、モチベーションは重要だと言われています。

 

また青砥瑞人著「4つの集中」(2021/3/18、KADOKAWAでは、集中力を高める神経伝達物質として、ドーパミン(ワクワク感)以外にノルアドレナリン(ドキドキ感)と、βエンドルフィン(ウキウキ感)が挙げられています。

ノルアドレナリン先行型の集中は「ここを乗り切らねばならない」という山場を一つクリアすると、徐々に周囲の状況が気になり始め、注意が分散し、集中力が落ちてしまいます。これはノルアドレナリン先行型の集中が、徐々に多くのコルチゾール(ストレスホルモン)を放出するからです。集中した状態を持続するには、βエンドルフィンの作用を借りながら、ドーパミンの分泌を促していくのが効果的です。ドーパミン先行型の集中を継続させ、高い学習と集中力を保ってくれます。

 

アンデシュ・ハンセン著「運動脳」(2022/9/10、サンマーク出版は、ドーパミン有酸素運動後に分泌量が増えると指摘しています。運動してドーパミンを増やせば、報酬系前頭葉前頭前皮質は脳の司令塔)への2つの「集中力を左右する部位」を活性化します。運動後には感覚・集中力が高まり、心が穏やかになります。

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YAMAP春山代表との対談の中での養老孟司先生の言葉を引用させていただきます。「入出力装置としての脳」(模式図)を見ながら説明を読むと良く理解できます。

『脳に関して言えば、身体で感じる感覚、つまり目で見る、耳で聞く、手で触る、鼻で嗅ぐ、舌で味わうという五感が「入力」で、それに反応して身体を動かすのが「出力」です。』                                
『まず、外界からの情報が感覚を通して脳に入ってくる。それを受けて脳の中で計算して、考えた結果が肉体の運動として出てくる。』

人間は体を動かす、動き回るのが自然、「本来の姿」だと思います。私自身が毎日1万歩の有酸素運動で体験してきたイメージを次の「模式図(仮説)」に示します。

立山連峰を望む恵まれた自然の景観を見ながら、心地良い・楽しい・良いな!という「快」の感情「思考」を巡らせ、毎日1万歩のウォーキングを実践しています。運動後の爽快感と達成感は何物にも代えがたい大切なひと時です。

有酸素運動は、①「快」の感情と、②「心身の健康」維持向上と、③「脳の活性化」、をもたらしてくれます。運動後は頭が冴え、読書や文筆活動に集中できます。思わず文章を書かずにはいられなくなり、筆(PC入力)が進みます。感性が研ぎ澄まされる感覚です。

 

脳科学的には、先に述べた3種の神経伝達物質の相互作用があると思われます。人間が外界から五感を通して得た入力情報から、脳内での「快」感情や様々な思考を通して、身体の運動(話す・書く・行動する)=自己表現により、達成感が確認できるのだと思います。その達成感は、脳内ループや五感へのフィードバックの好循環が生まれます。

 

解剖医・東大名誉教授・養老孟司先生の「感覚→脳→身体→感覚→」循環と脳内「回転」の重要性、青山学院大学福岡伸一教授の「動的平衡」シリーズ知見、そして順天堂大学・小林弘幸医学部教授の「健康な体とは、良好な血液が良好に流れていること」という文言からも、有酸素運動の意義は極めて大きいと感じます。

 

五感からの入力情報 →「快」の感情・思考 →行動(自己表現)→達成感、の好循環を活用して、『「快」の感情が行動の推進力、人間は体を動かすのが自然「本来の姿」』をモットーに、毎日1万歩の有酸素運動を生活の軸にしながら、創造的アウトプット=自己表現の量と質を高めていきたいと思います。