「スポーツ(運動)と脳科学」第81回ー「有酸素運動」研究ー

立山連峰を望む恵まれた自然環境の下、毎日1万歩のウォーキングを続けています。①心地良さ=「快」の感情と、②「心身健康」維持向上と、③「脳」活性化という効果を実感しながら、有酸素運動を毎日の生活の軸にしています。

 

今回はその有酸素運動について、少し掘り下げてみたいと思います。

先ず「有酸素運動」について、厚生労働省e-ヘルスネットでは「酸素を使い体内の糖質・脂質をエネルギ―源とする、筋肉の負荷が比較的軽い運動」、と定義しています。一般的には、ウォーキングランニングをイメージする方が多いかと思います。

 

次に「有酸素運動」研究の個人的なアプローチとして、私自身が読んだ本を参考に、3つの「基本概念」を定めました。3名の先生方とその著作を「基本書」として掲げます。

1.人間の行動原理[解剖医・養老孟司東京大学名誉教授]

 著書「考えるヒト(2015/10/10、筑摩書房『合目的性』『試行錯誤』

 著書「考えるヒト」「バカの壁(2003/4/10、新潮社)『脳内外入出力』  

 

2.生命の基本原理分子生物学者・福岡伸一青山学院大学教授]

 著書「新版動的平衡(2017/6/5、小学館)シリーズ著作 動的平衡

 

3.健康な体とは[医師・小林弘幸順天堂大学医学部教授]

 著書「整える習慣(2021/2/1、日経BP良質な血液良好流れていること

 

この3つの基本概念から得た私なりの結論は、『人間は体を動かし、動き回るのが自然、「本来の姿」』というシンプルな内容です。

 

「基本概念についての基本書」に加え、2名の外国人精神科医師が書いた「有酸素運動」関連の参考書を挙げておきます。本ブログ第4回・第5回記事で取り上げた本です。

アンデシュ・ハンセン著「運動悩」(2022/9/10、サンマーク出版

ジョンJ.レイティ著「脳を鍛えるには運動しかない」(2009/3/20、NHK出版)

 

上記「基本書」と「参考書」を合わせ10冊程度になりますが、これにネット調査で得た文献情報を含め、個人的な体験を加味した自分流の捉え方で「有酸素運動」総括を10項目に纏めました。

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1.有酸素運動=酸素O2獲得のための運動と捉え、体を動かし、動き回ることにより、①呼吸活発化、②心拍数増加、結果として③血流増加、が起こる。

 

2.有酸素運動により脳を含む身体全体への血流が促進される。身体と脳は、2つに分かれた別々の器官ではない。先ず身体を動かすと、身体そのものに多くの好影響を及ぼし、それが脳の働きも強化する。運動をするとすぐに前頭葉の血流量が増え機能が向上する。

 

3.脳内の神経伝達物質セロトニンノルアドレナリンドーパミンは、私たちの感情に影響を及ぼす。この3つは薬や運動でその量を増やすことができる。運動の場合、効果はたいてい運動後に感じられ、その効果は1時間から数時間続く。定期的に運動すれば、分泌される量も徐々に増えていく。そして、効果も運動後の数時間にとどまらず丸1日続くようになる。運動は薬と違ってノーリスクセロトニンノルアドレナリンドーパミンを増やせる。

 

4.運動をした直後にドーパミンの分泌量が増える。そのため運動後には感覚が研ぎ澄まされ、集中力が高まり、心が穏やかになる。ドーパミンには幸福感をもたらす効果もあるため、運動を終えるたびに心地良い気分になる。すると、集中力も更に高まる

ドーパミンは脳内で様々な決定を下している前頭葉に多大な影響を与える。特に前頭前皮質は脳の司令塔であり、長期的な目標を設定して達成する力が生まれる。また抽象的思考や数学的思考、論理的思考など、私たち人間を他の生物とはっきり分ける発達した認知機能も司っている。

 

5.運動は神経伝達物質の他、脳内最強とも呼べる「BDNF(脳由来神経栄養因子)」の生成を促す。主に大脳皮質や海馬で合成されるタンパク質の一種で、脳の神経細胞やの成長や新生を促し、脳の機能を正常に保つ働きをする。その結果、セロトニンドーパミンなどの神経伝達物質の合成を正常化する。

また最新の文献によれば、有酸素運動により骨格筋から分泌されるホルモン「イリシン」は、認知症アルツハイマー病)の特徴である脳内のアミロイドβの蓄積を減少させる可能性が報告されている。

 

6.運動は最もすぐれたストレスの解毒剤である。運動を終えるとコルチゾール血中濃度が下がりストレスが軽減する。またストレス反応のブレーキペダルである海馬と前頭葉が強化され、不安の引き金である扁桃体の活動が抑えられる。

 

7.有酸素運動は自発的・主体的・積極的な取り組みが重要(Jレイティ書12頁「運動が脳の働きをどれほど向上されせるかについて、ラットの実験により、強制された運動では自発的な運動ほどの効果がでない

 

8.運動すると心地良い気分になる理由(ハンセン書126頁)は、私たちの祖先は狩猟や住み処を探すときに走っていたからだ。どちらも生き延びる為の行動であり、そのために脳が報酬を与えてくれた

 

9.脳に最も効果的な運動の重要ポイントは、心拍数を増やすことだ。理想的な心拍数の目安は、最大心拍数の70~75%だ。具体的には、年齢30歳で133~143回、50歳で119~128回、70歳で105~113回という程度の心拍数が好ましい。

 

10.運動が創造性に計り知れない影響を及ぼす。作家・ミュージシアン・俳優・アーティスト・科学者・起業家など、多くのプロフェッショナルが創造性を高めるために運動していると口を揃える。

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今回の「有酸素運動」研究纏めを「模式図」に示しました。個人的には、「有酸素運動」を生活リズムの軸と位置付けています。

その有酸素運動は、「五感」からの外部情報入力→脳内「快」感情・思考→身体/脳「有酸素運動=自己表現→達成感→(好循環脳内ループ/入力へのフィードバック)→課題テーマ成長の螺旋(スパイラルアップ)というルートで「創造的アウトプット」「自己成長」をもたらします。

最近は、トレーニング・ジムや自宅室内で運動されている方も多い様ですが、有酸素運動は、出来れば自然環境下、即ち、太陽エネルギー(熱と光)が注がれ、樹々の緑(植物)に囲まれた場所で、新鮮な空気の中で行うことが望ましいと思います

自然界の生物の最上位に位置する動物たる人間は、自然環境下での他の動物や植物との共生が恒久的課題かと思います。繰り返しになりますが、人間は体を動かし、動き回るのが自然、「本来の姿」と思います。

 

また、有酸素運動の効果を最大限発揮するには、総括7で「自発的・主体的・積極的な取り組みが重要」と記しました。個人的には、自然環境下・自然体で、自由度を大きく(服装・時間帯・方法工夫)と自分軸(自分流・自己実現)を重視しています。

 

私自身、有酸素運動の心地良さ=「快」の感情を行動の出発点として、心・身・脳のパーフォマンス向上により、創造的アウトプットの量・質の向上と自己成長を、と思います。