「スポーツ(運動)と脳科学」第44回ー心豊かに、温かみのある経済教養小説をご堪能下さいー

田内学著「きみのお金は誰のため」(2023/10/31、東洋経済新報社)は、「読者が選んぶビジネス書グランプリ2024」の総合グランプリリベラルアーツ部門賞のダブル受賞した作品です。企業で働く方経営者投資家の方は勿論のこと、家庭の主婦学生・生徒さんやFIREを目指す方にもお勧めです。

 

本書は「いかにお金を増やすか」という資産運用の話ではなく、「お金の本質・経済の仕組み・働くことの意味」について、楽しみながら平易に学べる一冊です。

 

主な登場人物は、中学2年生佐久間優斗、米投資銀行・東京支店で為替や国際取引を行う女子社員・久能七海、それに錬金術師と噂される初老の投資家ボス、の3人です。

以下、要点の抜粋です。「 」内は、物語中のボスの言葉です。

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個人的プロローグ(19頁)「お金の正体は簡単なことや。たった3つの真実や」、「1.お金には価値がない、2.お金で解決できる問題はない、3.みんなでお金を貯めても意味がない」

 

1章(39頁)「自分で調べて、自分の言葉で深く考える」、(94頁)「大事なのは、GDPは「とりあえず」の数字でしかないってことや。本来の目的を忘れたらあかん」

 

2章(91頁)「経世済民。世を治めて民を救う、という意味や。経済は略語や」

 

3章(131頁)「お金に目がくらむと、その当たり前を忘れてしまうんや。土地だけやないで。でもなんでも同じや。全体を考えれば、値段自体が上がることに大した意味はない。それよりも、未来の幸せにつながる社会の蓄積を増やすことの方が重要や」

 

4章(162頁)「問題なのは、『社会が悪い』と思うことや。社会という悪の組織のせいにして、自分がその社会を作っていることを忘れていることが、いちばんタチが悪い」

 

5章(198頁)「世界は贈与でできているんや。自分から他人、他人から自分の贈与であり、過去から現在、現在から未来へと続く贈与なんや。その結果、僕らは支え合って生きていけるし、より良い未来を作れるそれを補っているのがお金やと僕は位置づけている。」

 

最終章(213頁

「儲からないと会社は存続できないが、儲けること自体を目的にしたら会社は長続きしない会社が長続きできるのは、社会の役に立っているからや。その結果として、儲けることができるそういう会社に人もお金も集まる。

 

エピローグ 6年後に届いた愛

・実の娘である七海に、社会と愛を伝えたかったのだ

・指で涙をぬぐう優斗に、七海が語りかける。『私、思うんだけどね。愛って、常に時差があって届くんじゃないかな』

・ボスの言葉がよみがえる。初めて会ったとき、ボスは1億円の山をポンとたたいて言っていた。「お金に価値はない。もっと大事なものがあるんや

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最終章とエピローグは、涙なしでは語れない内容です』。

是非、田内学書を手にして経済教養小説をご堪能下さい。ご家族にも、特にお子さんにもお勧めください。デビュー作である、田内学著「お金の向こうに人がいる」(2021/9/28、ダイヤモンド社)も良書です。