「スポーツ(運動)と脳科学」第53回-知性・感性・野性とマクリーン博士「三位一体脳モデル」-

私個人の「行動哲学について」ブログ第37回記事に取り上げましたが、最近の学びの中で、新たな観点の必要性に気付きました。それは理詰め(頭デッカチ)でなく、人間が本来持っている「感性」とか「野性」とかをもっと大事にすべきでは、という点です。

人間の本能・本性・本質人の思考・感情の原点にあり、我々の行動は面白い・楽しいなど興味・関心・好奇心と併せ、動き回りたいという欲求出発点だからです。つまり、「知性・感性・野性」のバランスが重要との認識です。以下、参考にした文献情報です。

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アメリカの医学博士ポール・D・マクリーンが提唱した「脳の三位一体論」という仮説に興味が有ります。人間の脳は太古の脳を包み込むようにできており、分析や計算を扱う左脳と想像やイメージを扱う右脳という左右の働きとは別に、脳の上下の働きがあるとするものです。

右手をグ―にして、次に左手でグーにした右手を包んでみます。①右手の手首から拳(こぶし)あたりが、最も太古で奥にある爬虫類脳の「脳幹」です。②次に、右手の拳周りが哺乳類脳の「大脳辺縁系です。③そして、包んでいる左手が人間脳である「大脳新皮質になります。

爬虫類脳反射悩)脳幹・・・身「体」

哺乳類脳情動悩大脳辺縁系・・・「感」覚 『本音』潜在意識(95%)
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人間脳理性悩大脳新皮質・・・思「考」・判断 『建前』顕在意識(5%)

 

地球上に生命が誕生してから38億年の間に、生物の脳もゆっくりと進化し現在の形になりました。人間の脳はその進化の名残を受け継ぎ、その結果「爬虫類脳」「哺乳類脳」「人間脳」という3層で構成されています。

 

マクリーン博士の「脳の三位一体論」は、脳は3層構造で、人間は進化とともに新しい脳を獲得していったという仮説です。

1. 生きるための爬虫類脳脳幹本能
2. 感じるための哺乳類脳大脳辺縁系感情
3. 考えるための人間脳大脳新皮質理性

 

1.爬虫類脳(脳幹)
本能的な反応を司ります。呼吸心拍鼓動を維持したり、敵対した際の「闘争と逃走の反応」など原始的な本能をコントロールします。

2.哺乳類脳大脳辺縁系
感情性行動快楽中枢を司る脳です。「好き嫌い」や「快・不快」を感じるのはこの領域です。喜び・愛情・怒り・恐怖・嫌悪などです。

3.人間的脳大脳新皮質
思考を司る部分で、論理的思考や数学的思考など知的プロセスを司ります。

 

これら3つの脳の部位が「爬虫類→哺乳類→人間」という進化を経て、「本能」的反応から「感情」的反応や記憶発生を経て、新しい脳=「人間的」な大脳新皮質へと至る進化を示しています。

 

マクリーン博士の「脳の三位一体論」は、厳密なモデルとして学術的に認知されていませんが、我々の日常生活で大いに役立つ仮説として注目です。

 

三位一体論において、私たちの人格は、爬虫類脳である脳幹と哺乳類脳である大脳辺縁系と人間的脳である大脳新皮質の相互作用によって決定づけられます。

 

かつて、大脳新皮質、つまり人間的な脳の部分こそが、知的な行為を司り、学習に大きく関わるものと考えられていたのですが、最近の研究で、より効果的な生活をするための鍵は感情をコントロールする大脳辺縁系にあるという見方がされています。

 

[参考書・記事]
ポール・D・マクリーン著「三つの脳の進化」(2018/3/2、工作舎
「豊か人」編「脳科学が証明!圧倒的行動力をつけたければ感情を味方にせよ!」(2018/5/26、ネット記事)
「コイヌマ( @koichan8888 )」著「ポール・マクリーン博士の3つの脳の層構造「三位一体脳」論」(2021/5/19、ネット記事)

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マクリーン博士の「三位一体脳モデル」は、最新の脳科学から見れば、議論の余地がある大胆な仮説ですが、ヒトの脳の構造・機能と人間の行動の関係を理解する上で参考になるかと思います。

 

上記知見から、個人的には、3層構造の脳の各部位の機能を、知性・感性・野性の3つの側面として理解しました。

 

私個人の「行動哲学」・「行動指針」・「PDCA自己管理手法」に加え、3人の先生の基本原理や仮説を取り入れ、一部modifyして、次の3項目を参考情報とします。

1.人間の行動原理合目的性試行錯誤養老孟司・東大名誉教授)
2.生命の基本原理動的平衡福岡伸一青山学院大教授)
3.脳の三位一体論仮説知性/感性/野性バランスマクリーン博士

 

3つの原理や仮説の根底には、「試行(錯誤)」「動的(平衡)」「野性」という「体の動き」があることに注目しています。人間は自然界の動物の一種ですから、「体を動かす」ことは必然です。個人的には毎日1万歩の有酸素運動は、生活習慣の軸になっています。人間は、人間脳以外に哺乳類脳と爬虫類脳も有していますから、思考・感情・行動を考える上で、3つの脳の構造と機能を総合的に考えつつ、身体感覚とか感性とか野性味とかを重視していきたいと思います。

 

本ブログは「スポーツ(運動)と脳科学」という主題ですが、様々な分野の記事を取り上げてきました。「人間研究」という視点も持ち続けています。人が「感じる・思う・考える」という脳内出力と「話す・書く・行動する」とい脳外出力=「表現」広義の運動と捉え、プラス「脳科学」の知見を日常生活の場で活用していきたいと思います。