「スポーツ(運動)と脳科学」第36回ー落合博満の勝負師としての人間力-

ブロブ第31回「落合博満は凄い人間らしい」に続く「落合博満」論です。第27回「文武両道 世界レベルの日本人アスリートの人間力」の続編でもあります。

落合博満氏の話題を取り上げるのは、楠木建著「経営読書日記」の「表」編と「裏」編で、楠木氏が落合博満氏(以下、敬称を略します。)の著書4冊を絶賛していたことがきっかけです。その内容の一部を引用します。
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「勝負の方程式」現代日本最高のリーダーの一人。勝利の方程式などというものはない。再現可能な法則はなくても勝つ可能性を高める論理はある。即ち「勝負」の方程式だ。
コーチング 言葉と信念の魔術」深い人間洞察に基づいた仕事論に感銘。自分で考え、経験の中で磨き上げていくことは野球やスポーツに限らない普遍的な仕事論。
「野球人」現代日本最高のプロフェッショナルリズムとリーダーシップの持ち主でその知性と見識を深く尊敬。余計なことは考えないから考えが深い
「決断=実行」:頑健な論理と深い教養に裏打ちされた一級の仕事論。経営者から新入社員まで読む価値がある骨太の書だ。
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今回は落合博満著「決断=実行」を読んでの重要ポイントと個人的考察を述べます。読み応え充分の本ですが、読者の行動に繋がることがその人にとっての良書ということで、先ず私自身の行動哲学や指針に与えた主要項目について記します。

[1]野球もゴルフも人生も、「インサイドアウト」が成功法則
 落合博満の打撃の構え・スィングと本書の内容からの個人的考察です。自分で好奇心や関心のある(内発的動機からの)テーマについて、考え、考えて、考え抜いて、真摯に取り組んで、という「内面」重視の路線です。落合博満は「仕事に取り憑かれろ!」と表現しています。

但し、あくまで自然体、平常心で「力まないこと」の重要性は落合選手の打撃フォームからも容易に推察されます。インサイドアウトという考え方はコヴィー著「7つの習慣」の基本概念として知られています。

個人的には、良好な成果を得るためには、基本方針(・哲学・理念)を出発点にPDCAサイクルを回して成長スパイラルを上昇軌道に乗せるというPDCA管理手法を採用しています。

Policy/Philosophy/Vision + P・D・C・A → Performance向上

[2]自ら「「決断=実行」した上での失敗は反省や教訓として次につながる
私自身は「自調・自考+自責・自行」を「行動指針」としていますが、落合博満は、よりシンプルに「決断=実行」と表現しています。論拠は、「決断し実行した上での失敗は反省や教訓として次につながる。周囲の人の知恵を借りながら、しかしどんな結果になっても責任は自分にあるという覚悟で決済し、実行する。」、ここに「仕事の醍醐味がある」、ということの様です。
落合博満はどんな状況でも、絶対に「ブレ」ませんね。

更に自分の「行動基本フロー」下線部(項目2と3)を追加しました。
1.自然体/平常心+2.興味・関心・好奇心+3.状況判断/思考(直観/熟考)/意思決定(決断)+4.心・技・体「行動」+5.知性/哲学→自己表現→自己実現→自己超越(社会貢献)


[3]一番大切なことは「自分の人生をいかに自分が思うがままに生きていくか」
これは前回ブログの岩尾俊兵准教授の「個人は皆、自分の人生の経営者だ!」という言葉と全く同じ価値観ですね。前回ブログ第35回をご参照ください。

 

最後に、落合博満著「決断=実行」の本から、印象深い記述を引用します。

監督への就任要請を受け
私自身は、監督になるとは夢にも思っていなかった。12球団のオーナーの中に、現役時代に「オレ流」や「個人主義」だと言われてきた私に、大切なチームを預けようとする人などいるわけがないと考えていたからだ。

監督として私が胆に銘じたこと
指導者にとって一番怖いのは、教える立場になったからといって、自分が何でも知っているとと勘違いしてしまうことだ。

自分で壁を乗り越えるために
何より常勝チームを作るには、選手が自分の考えや判断で動けるようにしなければならなかった。

組織とは、小さな「ピラミッド」の集まり
監督を務めていた時、私は「勝てば選手のおかげ。負ければ監督の責任」とメディアに発言していた。それはチームを預かる者としての偽らざる本音だ。無意識だったとしても責任転嫁してしまう人には、組織のトップは務まらない。

好奇心は自分を成長させ、感性を豊かにする
芸術でもスポーツでも、自分を成長させ、感性を豊かにしてくれるのは好奇心だと思う。好奇心を抱き、知りたいと思う対象は人それぞれなのだろうが、勝負の世界にいる以上、自分の仕事に役立つ物事については関心を持ちたい。

 

道を極めた(究めた)一流選手には共通点があります。凛々しさと同時に、本質を突き考え抜いたアスリートの言葉、その言葉の選び方や表現力は哲学心さえ感じます。「勝負師」として「男の世界」に生き続けている落合博満から多くのことを学んだ気がします。