「スポーツ(運動)と脳科学」第57回-福岡伸一博士からの学び(「新版 動的平衡2」を読みながら)-

自然界の生命現象を動的平衡と捉える学者・福岡伸一博士から多くの学びを得ています。2月下旬から何回か、本ブログで取り上げてきました。
 2/26(第43回)「動的平衡3」書から得た3つの価値観
 3/5(第50回) 「センス・オブ・ワンダー

 3/7(第52回)  「福岡博士動画」から得た特徴(5つを3つに集約)

以下、自分の言葉に置き換え、少し整理したいと思います。

 

[1]生命の捉え方→自分の価値観として

 1.結果でなくプロセスを重視するという発想

 2.物事を見極めるには、時間軸を考慮
 3.経営の目的は利益(だけ)でなく価値創造


[2]生命の特徴→自分の方向性

 1.目先のことに囚われず、中長期視点で物事を捉える
 2.部分でなく、全体の動き・流れ・リズム感を考慮する
 3.価値観を共有した上で、利他の精神を持ち、多様性社会を目指す

これらは、仕事・勉強・家庭・スポーツ・趣味にも適用できます。
自然の摂理は日常生活に応用でき、人生訓・哲学にも繋がります。


そんな整理をした上で、今、福岡伸一著「新版 動的平衡2」を読んでいます。読む順番が動的平衡動的平衡2(→動的平衡1、予定)と、逆になっていますが、成り行き上、やむを得ません。

福岡先生の著書は、本の冒頭部分の主張に重きがある気がします。良い本は大事な部分を何回も、何十回も読み返します。重要テーマについて考え・考え抜いて、深く掘り下げ、自問自答しながら本質を掴めれば何よりです。

以下、本書の要点を挙げます。

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1.動的平衡
絶え間なく動き、入れ替わりながらも全体として恒常性(=バランス)が保たれていること。生命を生命足らしめている最も大事な要素。

2.生命とは?
絶え間ない動きの中にあるもの。

3.方丈記
ゆく川の流れは絶ずして、しかも、もとの水にあらず。

 

4.最初に「動的な美」について
1)動的平衡としての生命はいつの時代も「渦巻」をその象徴に選んだ。
生命は個体としては一日、ひと月、四季といった周回リズムのうちにあり、・・・・・循環の中にある。いずれの周回循環も同心円状に閉じているのではなく、流れは外に向いて開いている物質とエネルギーと情報の流れは生命から生命へ、常に受け渡されている。一つの輪に閉じることなく、流れは絶えず次の渦に受け渡されながら連続する。

2)レオナルドダビンチ・伊藤若冲フェルメールの画、この世界は移ろっている、動いている、その動きの中に命があり世界がある

 

5.「自由であれ」という命令
1)人間は遊ぶ存在である

2)遺伝子の中には「産めよ殖やせよ」という命令の他に、あらかじめ別の種類の命令が含まれていることになる。それは「自由であれ」という命令だ。その由来と意味を考えることが、おそらく前著(動的平衡1)に続く本書における私の新たな課題となるだろう。

 

6.生命の律動こそ音楽の起源
1)私たち生命体の内部には、実にさまざまな律動が内包されている。心臓の鼓動、呼吸の起伏、脳波の低周波、セックスの脈動。その振動が、絶え間なく流転する生命の動的平衡を支え、かつ鼓舞している。

2)生命活動は音楽のパーフォマンスにあたるもの。生命の主体は我々演奏者の方にあり、より自由であって良い
3)たぶん、DNAという遺伝子は、音楽で言う楽譜と同じ役割を果たしているに過ぎない。記された音符の一つ一つは同じでも、誰がどのように演奏するかで違う音楽になる。遺伝子はある情報で私たちを規定するのと同時に「自由であれ」とも言っている。そう考えた方が、私たちは豊かに生きられるのではないだろうか

 

7.なぜ、多様性が必要か
1)センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目をみはる感性」を追いかけて
2)動的だからこそ、恒常性が保たれる
3)多様性動的平衡の強靭さを支えている
4)すべての生物は自らの分際を守っている。ヒトだけが、自然を分断し、あるいは見下ろすことによって分際を忘れ、分際を逸脱している。今、私たちが考えねばならないのは生命観と環境感のパラダイム・シフトなのである。

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最終章には、動的平衡」時間論が新書版で追加されています。
動的平衡は動きの中に生命があり、美があるということですから、当然ながら静止画でなく動画になります。時間軸があります。空間的広がりこそが時間の本質です。西田幾多郎哲学については、別途研究したいと思いますが、「空間即時間、時間即空間」という概念については「同時に」という意味のようです。空間と時間は一体物だということでしょうか。

 

よーく考えてみると、私たち人間は、太陽エネルギー・空気(酸素)・水など潤沢な環境の中で、植物(酸素と二酸化炭素の交換、食材としての作物)や動物(獲物、愛玩仲間)との共生が、自らの生存・摂食・自然生活のベースになっています。微生物の助けも借りねばなりません。多様性は必要不可欠な要素です。

「世のため人のため」という言葉も「世のすべての生命のため」と言った方が正しいのかも知れません。個々の限られた寿命の中で、自由に主体的に個性を発揮し自己表現できる、世界は素晴らしいことです。

だからこそ、自然界の中で、ヒトの、人の、人間の役割を、分際も理解した上で、分相応に、自己表現し、自己実現する自由を謳歌したいものです。

 

自然の摂理は人間のすべてを包み込むことができる」、というのが、今時点での私の中間総括です。引き続き、福岡博士の著書を読み込んでいきたいと思います。